「素数ゼミ」という昆虫が居るらしい

素数の神秘
「素数ゼミ」という昆虫が居るらしい
13年と17年を周期に大量発生するセミ集団のことで、別名を周期ゼミとも呼ぶ。彼らは北アメリカ大陸のみに棲息し、大量に発生したあとは次の周期までパタリと姿をくらます。なぜ素数の[13,17]を周期にもつのか?その謎に迫る。
最終更新日 2024/01/14

素数ゼミの大量発生

セミの大量発生とは、成虫の姿で空を飛び回り、交配(交尾)を行う年のことを指します。

セミは土の中で幼虫の時期を過ごし、地上に出てきますよね。つまり、13年周期や17年周期の大量発生とは、12年間ないし16年間を土の中で過ごし、残りの1年間で一斉に地上に飛び出してまた次の世代へ遺伝子を繋ぐというサイクルを指しています。

この素数サイクルを周期にもつセミはmagicicada属に属する種族のみで、全世界で7種しか発見されていません。

13年周期 4種
17年周期 3種

ではなぜその周期は素数である13と17なのか?これに関しては、おおまかに2つの学説があります。

【学説①】 捕食者や天敵を避けるため

素数ゼミ周期表

セミには鳥などの天敵が居ますが、この天敵の発生サイクルとセミ自身の発生サイクルが重なりにくい周期の種族が生き残った(※上図)。素数のもつ1とその数以外で割り切れないという特性のために、他の数字と重なる頻度が少なくなります。つまり、周期3年の天敵発生と、周期13年の素数ゼミ発生が重なるサイクルは、3×13=39 39年に一度となります(最小公倍数)。結果、天敵と発生サイクルの重なる頻度が少ない素数ゼミの種族が生き残った、というのが学説の1つです。

一見なるほどと思える部分もあるのですが、セミの天敵は鳥をはじめ数多く居り、素数ゼミの発生サイクルがそこまで有利に働くとも思えない。その年だけ大量に発生するという点にも生き残りのヒントがあるのかも知れない。その数は数十億匹とも言われており、圧倒的物量によって次の世代に遺伝子のバトンを繋いでいる、と考えられる。

【学説②】 近隣種との交雑を避けるため

素数ゼミの交雑

こちらに関しては静岡大学大学院教授「吉村 仁」氏が研究を進めていることで有名です。交雑とは、近隣種と交配(交尾)することを指し、遺伝的な雑種が生まれます。13年,17年周期の素数ゼミの近隣種モデルとして、12年~18年周期のセミが居たと仮定します。これらのセミが交雑する周期については、【学説①】でも説明した最小公倍数の考え方を利用します。

上図によれば、13年,17年周期の素数ゼミは他の近隣モデルのセミと交雑する頻度は100年を切ることはなく、また平均値も高いことが分かります。

これは素数であることにより、最小公倍数が他よりも高くなっていることが原因となっています。

近隣種との交雑は、雑種を生み出し絶滅リスクを高めるとの見解があります。この交雑を避けた結果、素数ゼミが生き残ったとする考え方が【学説②】です。

おもしろい!

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